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テーマ:WEB著作権
執 筆:菅沼 殿
今回で知識の泉は最終回になります。
第一回から、主に著作権について、その概要から現場レベルでの運用についてお話してきました。
しかし、実際に仕事を依頼する際には、著作権ばかりではなく、
仕事の内容や納期、支払い、また納品物の責任範囲などについて
両社間で共通認識を取り決めを行うほうがよいでしょう。
今回は上記事項を網羅した契約書サンプルをご用意しました。
個人情報を取り扱うデータベース開発を請け負う場合は、さらに詳細な契約を取り決める必要がありますが、
一般的なホームページ制作の場合は、通常のデザイン業務を請け負う場合と変わらず、基本的な条項を押さえて
おけば良いと思います。
・成果物の形態、納期、報酬について
・権利関係、責任制限、機密保持について
以上が契約の要点になります。
サンプルはデザイナーの立場で制作しましたが、実際の契約では、契約内容や状況によって
適宜加筆修正してお使い頂ければと思います。
【サンプル】 ホームページ制作業務委託契約書
今回は、実務レベルで、著作権がどのように取り扱われているか、WEB制作業者とクライアントそれぞれの立場から見ていきましょう。
クライアントの立場としては
納品されたホームページは今後自由に運用したい、これは大前提の要望でしょう。
更新はもとより、納品されたページを元に新規ページも作りたい。送信フォームCGIも複数サイトで利用したい。
ホームページで作成したロゴやキャラクターは、編集可能なEPS形式で納品してもらい、自社商品に印刷して販売したい。
他にも様々な要望をお持ちでしょう。
ですがここに書いたことは、著作権の譲渡が行われていない限り(情報の更新を除いて)すべて著作者に承諾を取らなければいけません。
ビジネスの現場では、制作物の納品と共に、著作権もクライアントに譲渡されると誤認されがちですが、契約書がない場合は著作権は移転していませんので、厳密にはクライアントの著作権侵害行為となります。
ですが、クライアントにとって納品物を自由に運用できないのは、不便極まりないものでしょう。
また、実際の業界慣習として、ホームページ内で使用した写真やバナーなどは一度納品したら、あとは自由に使い回しされる事が多いのが実情です。
しかし、写真やイラスト、プログラムなどは、制作者自体が外注していることも多く、外注先は納品案件内を条件に制作しています。
クライアントが制作物を自由に複製したり販売したりすることはやはり問題になります。
納品後の著作権問題については、複製権、譲渡権、翻案権など二次利用に関するものほとんどです。
この範囲(どこまで譲渡するか?利用の範囲は?)を事前にクライアント・制作者両者で取り決めておく事で、かなりのトラブルを防げます。
著作権については(トラブルに関わる事例のほうが何かと説明しやすいので)「侵害された」「守るべきもの」と過剰な反応が目立ちますが、本来は制作者が自由にコントロールできる柔軟な権利です。
譲渡も出来ますし、全部あるいは一部などその範囲や内容も制作者が決定できます。
これを機に著作権へのイメージを見直し、制作者は納品後の成果物に対してクライアントが快適に運用できる事を目指し、できる限り柔軟な権利解放(無料もしくは対価引き替え)を考えてもいいのではないかと考えています。
※ただし、著作者人格権は著作者だけに付与される権利で、譲渡はできません(本稿 第三回参照)
次回はいよいよ最終回。仕事請負時の契約書サンプルを公開いたします。
著作権は著作物のコピーを禁止するものではありません。
著作権は、著作物をコピーして良いかどうか、コピーや改変をするならどの範囲か、またその為の対価は?など著作者自身が著作物の使用目的や範囲を決定できる権利なのです。
この権利を無視して、例えば第三者が勝手に著作物を動画共有サイトにアップロードし、不特定多数に公開することは違法です。
最近はブログやツイッター、Facebook等でも個人が自由に情報発信できますが、ネット時代だからこそ起こりうる著作権侵害の事例を見ていきましょう。
データや事実には著作権がありません。(思想、感情に基づいた表現ではないため)
しかし、ニュースサイトで配信される記事は、ライターが事実やデータを元に執筆した著作物であり著作権があります。
第三者が勝手に転載すると「複製権」や「公衆送信権」の侵害にあたります。
出版会社が提供するあらすじをそのまま転載したり、本の表紙をアップロードすることは著作権を侵害しています。
ブログなどに掲載する場合は、本を読んだ感想として、自分の言葉であらすじを載せること、本の表紙はAmazon等のアフィリエイトプログラムより画像を掲載する方法であれば著作権はクリアになります。
「引用」は著作権法に定められた条件を満たせば問題ありません。
一般的に、著作物を利用する場合は、著作者に許可をとり(必要であれば対価を支払い)利用することが原則です。
しかし、引用については、許可を得ることなく、また対価を支払う事なく自分の作品の中に他社の著作物を掲載する事ができます。
その条件とは、
◆主従関係
自分の創作部分が「主」、引用部分が「従」であり、「従」は必要最小限でなければいけません。
◆明瞭区別
引用部分を明確にするために、「」などでくくって自分の創作物と区別して表示しなければいけません。
◆必要性
その引用が、自分の創作物を表現(主張の強化、説明、正当化)するために必要でなければいけません。
◆改変しない
引用は、改変してはいけません。また写真の場合はトリミング等をしてはいけません。
◆出所明示
引用に付随して、著作者、タイトルなどの情報を明示しなければいけません。
などが挙げられます。
引用範囲を数値で表せるような厳密な基準はありませんが、例えば自分が発表した論文や写真、音楽が、他の第三者が自分の制作物のようにブログやtwitterなどに掲載していたら...と仮定してみて、どの範囲なら引用として許諾できるか?を考えてみましょう。
今回は、料金を支払って制作依頼したWEBサイトは一体誰のもの?というテーマでお話したいと思います。
著作権自体は、第一回で解説したように、「創作した時点」から自動的に付与されます。
著作権を行使できるのはデザイナーですが、実際の仕事では、依頼主が料金を支払って制作物を依頼しているわけです。その制作物を、依頼主が自由に使えないのはおかしいじゃないか、という事ですね。
これは、依頼時の契約内容が非常に重要になってくるのですが、著作権を譲渡するかしないかで、その後の制作物の取り扱いが大きく変わります。
日常の取引の中で、契約書を取り交わさない場合、納品後に料金が支払われると、制作物の著作権も発注者に移転する事が暗黙の了解、という風潮がデザイン業界にはありますが実際は誤りです。
著作権や著作人格権は、納品後もデザイナーのものです。
料金はあくまで、デザインを制作する実費であり、発注者がデザインを自由に利用できる権利も含まれる、という事ではありません。
ただし、制作費以外に、権利譲渡の対価を支払う事で、発注者は制作物を自由に利用できます。
譲渡した権利については、発注者がどんな形で利用しても、あるいは他媒体に流用してもデザイナーは一切口を出すことはできません。
(例えば、発注者がWEBサイト内のロゴ、写真、バナーなどのデザインを流用し、ポスターやパンフレットを新たに作成した場合など)
このような運用が希望であれば、契約書においてデザイナーはデザインの著作権を発注者に譲渡し、かつ著作人格権(※)を行使しない契約を行います。
著作権や著作者人格の中には、「複製権」や「譲渡権」、「同一性保持権」など複数の権利を内包していますので、どれを譲渡し、どれを行使しないのか、権利をどの範囲で許諾するのか、十分に検討する必要があります。今後の運用面で非常に大切な事ですので、双方の合意をえて契約書を作成しましょう。
(※)著作人格権は「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」があります。著作人格権は他人に譲渡、相続はできず、また放棄も出来ません(ただし「行使しない」は可能)。
実務においてはとくに上記の同一性保持権(著作物の内容を勝手に変更・削除・改変させない権利)を「行使しない」事、著作権を譲渡する事の2つの契約を結ぶことで、発注者が自由に制作物を利用できるようになります。
インターネット上の著作権、まずはWEBサイトの著作権から話を進めましょう。
前回、WEBサイトの著作権については「主にサイト内の写真、文章、プログラムなどがその対象になる」とお話ししましたが、それでは、これらを除いたWEBサイトの骨子(レイアウトやデザイン)は著作権の対象にはならないのでしょうか?
答えは、残念ながら著作権保護の対象になりません。
これはエディトリアルデザイン(雑誌などの誌面デザイン)にも言えることですが「配色」や「レイアウト」は、情報をいかに見やすく正確に伝達するかというアイディアや手法に分類され、作者の感情・思想を独創的に表現した著作物には該当しません。
写真や文章には著作権があり勝手に使用することは違法ですが、アイディアや手法を模倣・使用することは違法ではないのです。
ですが、大手銀行や有名SNSなどのWEBサイトは特徴的で、一目でそれと分かるほどブランドが確立されていますが、例えば全く同じ配色、レイアウトで特徴を複製したサイトを作ったらどうなるでしょうか。
これは、ユーザーが誤認しそのサービスやブランドを混同する恐れがありますので、不正競争防止法によって運営者は複製サイトに対して運用差し止めや損害賠償請求ができます。
レイアウト・配色の模倣は著作権侵害にはなりませんが、デザイナーとしてその職務・意義を理解し、自ら独創的な作品を制作することが求められます。
また、ホームページを閲覧しているとよく見かける
Copyright c ●●●. All Rights Reserved. という表示ですが
これは、サイト上のコンテンツに対する著作権を明示的に表示しているものです。
前回、著作権は「創作した時点」から自動的に付与されるとお話しましたが、なぜわざわざこのような表示を行うのでしょうか。
実は、上記の自動的に著作権発生する仕組みは「無方式主義」といい世界共通の制度なのですが、一部の国では、著作権を登録したり表示をしないと認められない「方式主義」の国があります。そのような方式主義の場合でもc表示をすれば著作権が保護されます。
特にネット上では国や地域関係なく公開されるコンテンツですので、c表記が一般化しました。
みなさん初めまして。プールデザインの菅沼です。
今回の知識の泉では、最近よく話題になる「著作権」についてお話します。
インターネットの普及、高速化により動画や音楽、写真など大容量のデジタルデータを簡単に扱えるようになりました。しかし、それに伴い著作権を侵害した違法な事件、裁判も増えています。
コンテンツを守り正しく運用するために、制作者・閲覧者の両立場から著作権への理解を深めていきます。
その前に、著作権とは何か、基本的な知識についておさらいしておきましょう。
著作者が創造した著作物を「盗用・転載」などから守り、著作者の権利を保護するものです。
著作物を作者に無断で使用すると、著作権の侵害になり法律で罰せられます。
※ネット上では、ダウンロードや複製が容易なため、上記の盗用・転載が起こりやすい環境にあります。
大人から子供まで、上手い下手に関わらず、思想、感情に基づいてオリジナルに創作されたものを指します。
絵画、写真、文章、楽曲、映像、建物などはすべて著作権の対象となります。
WEBサイトでは、主にサイト内の写真、文章、プログラム(システム)などがその対象になります。
ただし、レイアウトや配色、HTMLのソースコード自体は、アイディア・工夫・手法に類するものであり著作権侵害の対象にはなりません。
なお、著作権は創作時点から発生し、権利取得の申請・手続きは必要ありません。
また、公の場で発表するしないに関わらず著作権は発生します。
WEBサイトでは著作物を守るために、右クリックや直リンク禁止のプログラムを設置したり、画像にウォーターマーク(ロゴの透かし)を入れたりとネット特有の対策が取られていますが、これらも完全ではなく一般閲覧者のユーザービリティを損なう結果につながることもあります。
また、パロディや引用、イメージ図の掲載について個々で判断基準が違い、著作権違反の是非についてはよくネット上で問題になっています。
みなさんも、著作権を含むYoutubeの映像をブログに貼ったり、お気に入りのメーカーから新商品が出たりするとその画像をツイッターに乗せたりしてませんか?
著作権は、一昔前までは広告や出版業界の限られた人が認識しておけば良かったものですが、現在では誰もが意識しておかなければならない身近な法律になりました。
次回より「インターネット上の著作権」を中心に、勉強していきましょう。